NACのブログ

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#4 おれど会: 時間の約束についての困り事や経験

2022年1月11日、本年最初に開かれたおれど会の研究成果報告です。教室にて対面で実施、参加人数は雨天のためか少なめの3人でした。

 

この記事を書いている報告者の私は、時間の約束についての困り事と言えば時間に間に合わないことの悩みだろうと思い込んでいましたが、そうとも限らないことがわかりました。

 

時間の約束を守ることが困難な原因

・全般的に動作がゆっくり(スピードへの意識以上に処理速度IQの影響もあるかもしれない)

 

・生活リズムが不定のため行動予定の見通しが作りづらい

 

・守るべき約束があるという現実からの逃避

 

・ギリギリで間に合った成功体験 & 間に合わなくても許してもらえた成功体験

 

・逆に、間に合わなかった失敗体験から約束の時間を守ることに対する情熱を失っており、特に遅刻が確定した時は特別急がない。

 

・家を出るまでに必要なものを準備することが難しい。絶対に必要なものをなくして探す時間をとられたり、用意するべきものの見積もりが甘い。

 遅刻確定時にはどうせならと、「必須ではないがあれば嬉しいもの」を片っ端からバッグに詰める行動を始めてしまう。例えばモバイルバッテリーや、使う可能性がないと言い切れなさそうなクーポン券など。

 

・移動にかかる時間を超理想的な条件で計算しがち。(ここは走れば検索結果より一本前の電車に乗れるだろう、ここの乗り換えは迷わないだろう、など)

 

・逆に約束の時間を把握できている時、その時間が迫るにつれて落ち着かなくなってしまい、そわそわして何も手につかなくなってしまう。その間はやるべきことが消化できず、さらにそのことで悔しさや苦しさを感じる。具体的には不安で時計を過度に何度も確認してしまうなど。

 

原因についての感想

・間に合わせることへの情熱のなさは、学習性無気力にも通じるのではないか。苦手なものを苦手だと認識できていることは、悪いことではないのでは。

 

・【約束に遅れる不安vs甘え】のせめぎ合いのラインを動かして、不安優勢にしていきたい

 

・精神的な負担感がなるべく少なく時間を守れるようになったらいいなという理想

 

ASDにありがちな不安の強さが約束の多さと関係しているのではないか。日々のタスクを同時進行で行なったり、時間を緻密に守る必要が強い時代になり、障害の社会モデル的な観点からは、ASDの生きやすさが厳しくなっている可能性がある。

 

原因に対する提案と情報提供

・約束の時間までの残り時間が減っていくことに恐れを感じ、時間を確認しっぱなしになることについては、【①壁掛け時計を部屋に設置】【②アレクサが1分ごとに時刻を読み上げてくれる、「分刻みの時報」スキルを利用する】の2点が提案されました。

 

・動物による時間感覚の違いを調べた研究があり、ハエは人間よりも視覚情報の時間分解能が高く、1秒間に最高で260フレームを知覚できるよう。

一方ASDを対象とした認知特性の違いを調べる研究でも、知覚情報の感受性が強い傾向があり、蛍光灯の素早い点滅を認識できる人が中にはいるようだ。

時間の主観的な感覚の違いはこのあたりから生まれているのかもしれない。

 

 

遅刻をなくしたり、減りゆく残り時間への不安を解消することは難しいように思われますが、より良い形でこの困りごとと付き合っていける方法が見つかったらそのつどメンバーで共有したいと思います。生物学・医学的な観点からの指摘もあり、大変興味深い内容となりました。

以上が今回の報告となります。